「世界一貧しい大統領」ホセ・ムヒカ氏の自宅を訪問! どうにかお会いできた「15分」から生まれた幸せ


ウルグアイ

南米のブラジルとアルゼンチンに挟まれているこの国は、国土の約90%が可耕地で農牧業が盛んな国です。また、南米の中では生活水準や教育水準(識字率など)が高いと言われています。

 

 

ウルグアイの農牧製品は、土地面積当たりの収穫は少ないものの、質の良い製品として知られているようです。

(バスから見た風景)

 

しかし、歴史的には軍事政権の時代があったり、現在でも国民の3分の1が銃を保持していたりと、日本と比較すると「安全で豊かな国」とは言い難い国です。

 

その国の元大統領として、世界的にも人気だったのがホセ・ムヒカ氏。

(画像元:yukadiary.com/5744.html)

 

2012年にブラジルで開かれた国際会議でのスピーで、彼の名は世界へ広がりました。

 

 

世界のリーダーが、持続可能な環境問題について「どう発展していくか」とスピーチする中、ムヒカさんは世界の消費主義社会に対して、きれい事ではなく正面から疑問を投げかけました。

 

彼のスピーチはこんな言葉から始まっています。

「質問させてください。・・・もしドイツ人が一家族ごとに持っている車を、インド人が持つとしたら、この地球はどうなってしまうでしょう。私たちが呼吸できる酸素は残されているでしょうか。」

 

先進国に向けたメッセージは「発展させるために生まれたのではなく、幸せになるために生まれた」ということ。

また、「本当の貧しさは、すこしの物しか持っていない人ではなく、もっともっとと、いくらあっても満足しない人である」とも語っています。

 

世界の人が「わかっているはず」なのにきれい事で逃げてきた事を、本音で語った小さな国のリーダーの言葉は数多く、世界へ影響していきます。

 

 

私自身も、彼の考え方に興味を持った一人であり、この旅をきっかけに実際に会ってみたいと思っていました。

もちろん、一国の元大統領であるという事実から、簡単に会えるとは思っていませんでした。しかし、知人が直接会ったという情報を耳にし、私も行かない理由がないと思い、ご自宅を訪問しようと決意したのです。

 

 

 

ムヒカさんの自宅は、ウルグアイの首都モンテビデオから少し離れた郊外に位置します。

 

郊外とは言っても、少し離れただけで、かなり田舎の風景が広がっています。行き方は、

「タクシーで行く(有名なので、ある程度の人はある程度の位置を知っている)」

「バスで行く」

のどちらかでした。

 

タクシーで行くお金はないので選択する余地もなく「バス」でした。

 

滞在した宿のスタッフに、

「ムヒカさんの家に行きたい」と伝えると、

「ペペ(ムヒカさんの愛称)の所へ行くの?」と笑顔になり、

「バスで乗り換えて行くと、近くまでいくわよ」

と教えてくれました。

 

詳しいことはわかりませんが、とにかく行ってみるしかありません。

 

 

 

滞在した宿はモンテビデオの中心部から2ブロック外れた路地でした。

 

 

この日は週末。私は曜日感覚を忘れていました。週末の人通りが少ない危険性に気づいたのは宿を出てからでした。

人のいない雰囲気は異様なもので、この旅で一番緊張していたことを覚えています。もちろんカメラを出すこともできず、早歩きで静かな通りを歩いていきます。

 

危険に感じる道を迂回しながら、教えてもらったバス停に着き、教えてもらった番号のバスを待ちます。週末なのでなかなかバスも来ません。

 

通りかかる人全てが怖い存在で、常に周りの状況を観察しながら待っていました。

 

 

 

 

その後バスを乗り換え、なんとか乗り継いで1時間は過ぎたでしょうか…

「ここだぞ!」と降ろされたのは舗装もされていない道。

「こんなところ」に元大統領の(大統領時代も住んでいた)家があるというのです。

 

「本当にここなのか?」と思いながら、足を進めます。たくさんの番犬に吠えられながら進むこと5分、一人の男性がいたので尋ねてみました。

 

「ムヒカさんにお会いしたいのですが。」

 

男性は答えます。

「ここが家だよ。」

 

 

本当に「こんなところ」にありあました。

 

 

到着した安心感と、元大統領にお会いできる喜びで笑顔になると・・・

 

「今はお昼寝中だから、あと1時間後に来てくれ」とのこと。(男性は訪問者の扱いに慣れていました)

 

 

 

「じゃあ散歩してきます」と言ったものの、まわりに何も無い田舎道。10分で戻ってきてしまいました。

何もせず、ずっと待つのは大変だったので、絵を描いて待つことにします。

(ムヒカさん自宅前の門)

 

夢中になっていると、門の奥から のっしり…のっしり…と歩いてくる人に気づきます。

 

ムヒカさんでした。

 

 

その姿はテレビで見た姿とは違い、着ている服はボロボロどころか、靴には穴が開いており、足の親指が見えているではありませんか。

 

唾を飲み込む音が聞こえるくらい、まわりの物が見えなくなっている自分がいました。

 

 

ムヒカさんには、訪問者がいると伝わっていたらしく、外のプレハブへと招待してくれました。

 

寝起きということもあってか、最初は不機嫌そうな表情にも見えました。

 

いくつか質問した後、子どもたちへメッセージをお願いすると、すぐにペンをとり、スラスラと書き始めました。

スペイン語でわからないので友達を通して訳してもらいました。

以下、ムヒカさんからのメッセージです。

 

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一つのことでつまずいて、最後までやり遂げることが嫌になることがあるでしょう。

勝つことや1位であることは重要ではない。

それよりももっと大切なことは、一度始めたことを継続するとこ、最後までやり遂げること。

外見の美しさは、それほど大事じゃない。だって、(外見の美しさのような)薄っぺらいものは、長くは続かないから。

私たちの考え方や気持ちは、常に覚醒しているから。

悪い考えを持ってはいけない。人々を助けなければいけない。

 

もしあなたが裕福ではなくても、お腹をすかせた子どもがいたら、パン一つでもあげることで、その子が笑顔になる。

もっと貧しい人々、あなたよりも少ないお金しか持っていない人々を、常に助けなければいけない。

あなたができることで。

 

助けを必要をしている人々を、いつも心から助けなければいけない。

心は、いつも満ち足りていて、楽しいのがいい。

これが幸せ。

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貧しくも長旅をし、ここまで来てくれたということに心を開いてくれ、笑顔も見せてくれるようになりました。

さらに、日々の貧しい食生活を知ったムヒカさんは、「これを持っていきなさい」と言って、ムヒカさんが作ったトマトを手渡してくれました。

こんな幸せはない!と喜んでいると、「これもあるぞ」と言い、他の野菜も袋に詰めてくれました。

 

 

 

最初の緊張感とは違い和やかな空気で過ごしていると、庭先から、足が折れ曲がったまま、さらにお腹には大きな傷跡が残る犬が出てきました。(おそらく車に轢かれたのでしょう)

 

彼はびっこを引きながら、そっと私の足元へ近づき、顔を膝へつけました。

 

彼の体を摩ってあげると、ガリガリとまでは言いませんが体は細く、まわりの番犬とは違って、吠えるほどの元気はありませんでした。

 

 

何もせず、ただ私の膝に顔をつけているこの犬。

「私もペペさんに助けられ、命があることにありがたさを感じている一人です。」

と語っているかのようでした。

 

 

彼がわざわざびっこを引きながら、近づいてきたのはなぜでしょう。今になっても不思議な体験でした。

 

 

スッと立ち上がるムヒカさん。

「頑張れよ」と私の首の後ろをポンっとたたき、いつも通りの畑仕事に向かっていきました。

中央茂みの中に、せっせと畑仕事に励む白いシャツのムヒカさんが見えます。

 

 

つかの間の15分間。

されど、強烈に刺激された15分間でもありました。

 

 

 

帰り道・・・。

かなりの田舎なのでしかも週末。再びバスが通ることはありませんでした。

 

途方にくれ、来た方角にとにかく歩き、ヒッチハイクをすることに。

すると、数台目で赤いトラックが止まってくれました。

バスが来るところまで乗せてくれるとのこと。

荷台には布団で楽しそうにじゃれ合う兄弟。初めて見る日本人にも笑顔。つられてこちらも笑顔。

 

送っていただいたお礼に、ムヒカさんからいただいた野菜をお裾分けすると、「ペペ(ムヒカさんの愛称)が作った野菜なの?それは嬉しいわ!」と言ってくれました(たぶん)。

 

言葉が通じない。それでも幸せだと感じるのは「助け合う心」を共有できたからでしょう。こんなに気持ちのいい幸せを日々感じていたでしょうか。

 

 

 

 

 

前日は具材の無いパスタで飢えをしのぎましたが、この日はムヒカさんからいただいたトマト、野菜、ニンニクを入れたパスタ。野菜の味が染みており美味しさは倍増。

小さなことかもしれないけれど、こうした「ありがたさ」を感じることは幸せなことでした。

 

 

 

 

この記事の始めに、「日本に比べて、安全で豊かな国とは言い難い」と述べました。「豊か」とは何でしょうか。

日本をはじめとするいわゆる先進国と言われる国で考えられる「豊か」は「物質的」なものです。

しかし、ムヒカさんの言う「豊か」は、「精神的」な豊かさです。

 

 

私はムヒカさんのある言葉にハッとさせられました。これは様々なインタビューでも話していますが

「物をお金で買うのではない。お金を得るための時間で買っているんだ。」

という言葉です。

 

 

 

「必要最低限」というものは人によって価値観も違うし、難しい感覚ですが、「必要以上に」と考えると、確かに私たちは必要以上のものを「消費」しているのではないかと感じます。

そして、そうせざるを得ない、今の消費社会に気づいていないことに、問題があるのです。

 

 

これは比較しないと感じないこと。物質的な豊かさが当たり前になっている日本では気づきにくいことかもしれません。

 

 

 

様々な世界を見てきた瞳は、多くをシンプルに語る、力強いものでした。

 


1件のコメント

  1. 隆吾さん、素晴らしいですね。
    時々、繰り返し読ませてもらいます。
    人としてこのような方に少しでも近づきたいです。
    そして、隆吾さんの行動と
    こうして素晴らしい文章で伝えてくれることに感謝です。
    今、とても満たされた、そして気が引き締まるような気持ちです。
    ありがとうございます。

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