アルゼンチンのレシステンシア。
この街を知る日本人がどれくらいいるでしょうか・・・。
アルゼンチンのコルドバから、パラグアイのアスンシオンへと向かう途中にあるこの街。
目的地のアスンシオンへ直接行くことも可能でしたが、カウチサーフィンで「泊まってもいいよ」と言ってくれた方がいたので、中継地点として滞在することになりました。
ガイドブックにも載っていなければ、検索してなかなかピンとこないこの街。特に観光名所があるわけでもなく、特に行きたかった場所でもなかったのですが、「休息」も兼ねて滞在しようと決意したのです。
実はこの街に滞在することに、少し不安を感じていました。
と言うのも、今回宿泊させていただいた方のカウチサーフィンの情報に書かれていたのは「宿泊可能人数15人」。
どんなデカイ家なんだ?どんな施設なんだ?狭いけど15人泊めちゃう変な人なのか? ・・・不思議というか、不安というか、複雑な気持ちでした。
バスターミナルに到着すると、野良犬が数匹。まわりには何も無く、静かな雰囲気。田舎と言えど、一応南米なので、それなりの警戒心で教えてもらった住所へと歩いて行きます。
バスターミナルから徒歩3分。着きました。
門の前でインターホンを押して待っていると、玄関の影からこちらを覗いている人影が見えます(インターホンは使えいと知ったのは後のことです)。
彼もこちらの様子をうかがいながら出てきます。
挨拶をすると、その人は連絡をくれた本人ではなく、「後から来るよ」とのこと。
最初から謎でした・・・。
家にいた方はお友達か誰かだろうとは思いましたが、その方は英語がしゃべれるわけでもないので、お互い変な雰囲気でリビングに座り、時間だけが過ぎていきます。
そのうち音楽が大音量で流れはじめ、奥からちょいマッチョでタトゥーの入った人も出てくる・・・。雰囲気が怖い。
けど、こちらを気にかけてくれていて優しい。から余計に不安・・・。
しばらくすると、連絡をくれた方が帰ってきました。
とても笑顔で優しい人だったので安心します。
そして家にいたのは友達と兄のよう。
こちらがそのメンバー。
南米でよく食べられているエンパナーダを仲良く作っているところです。
一番怖そうなアニキ(兄)に「日本ではどんな曲を聞くんだ?」と聞かれたので、
・AKB48 ・湘南乃風(好きそうだったので) ・美空ひばり
そして、ピコ太郎を紹介。
彼にとってピコ太郎は初めてだったようで・・・大爆笑!!!
すると、これが面白いんだ!と言ってみせてくれたのは、日本のドッキリ番組。
変な空気は楽しい空気へ。
そこから打ち解け合い、「怖いアニキ」のイメージは、「けっこうお茶目なアニキ」へと変わりました。
まさかピコ太郎がきっかけになるとは・・・。
こうして始まったレシステンシアでの「私と彼らの物語」。
ここからは、
連絡を取り合った方を「A」
Aの兄を「アニキ」
マッチョでミュージシャンの方を「C」
とします。
Aさんから「明日、ミヤザキの映画やるから見に行かないか?」と言われました。
ミヤザキと言えばジブリを思い浮かべます。
こんな所で?そして今?
と思いつつも、せっかくの機会だし「イエス」と答えました。
そして翌日。
もらったのがこのチケットがこれ。
「千と千尋の神隠し」ではありませんか!本当にジブリ映画だったのです。
上映時刻は18:00。
楽しみにその時を待っていました。
しかし、18:00時に彼らがしていたことは、「ご飯を食べる」でした。
「18:00だよ?」と言っても、返ってきた返事は「大丈夫だよ!」でした。
よくわかりませんが、待つ事にします。
家を出たのは18:30分を過ぎていました。
よし!と気合いを入れて出発すると、アニキが何かを思い出したかのようにしてます。そして一瞬迷ったあげく、「やはり大切なもの」だったらしく急いで戻っていきました。
バス停で待っていると、アニキが先ほどまで背負っていたカバンの変わりに、持っていたのは・・・ 手作りのポップコーン。
映画を見ながらポップコーンを食べるために、走って家に戻るなんて、アニキ可愛いじゃん!
と、思いましたが、アニキはいきなり食べ始めます。その勢いはバスに乗っても止まらず。
(一番左のアニキの足元にポップコーンが見えます)
バスを降りるころには全て食べ終えてしまいます。
陽気に笑いながら歩く3人。※もはやアニキの手にポップコーンはありません。
到着したのは映画館というより、ショッピングモール内のホールといった感じ。
ショッピングモールの前にはこのような看板が。
数回に分けて、ミヤザキ映画を上映しているようです。
中に入ってみると案の定「途中」でした。すでに上映開始から1時間以上経っています。
映画の内容で言うと、おくされ神が湯屋に到着し、千が案内するところでした。それでも特に気にする事なく、なんだか楽しそうな彼ら。
映画と言っても、スクリーンにプロジェクターで映したもの。海外ではよくありがちなものですね。
言葉はもちろんスペイン語。
日本語との違いや、各キャラクターの声優の違いが意外と面白く、リンの声にハリが無いのはちょっと残念でしたが、なかなか経験できない体験でした。
(横の席はスクリーンが全てみえません)
上映後、子どもが「トットロ、トットーロ♪」と歌っていたのが印象的。
日本のものがこうして日本人の知らない土地で見られているということに感動します。
そのまま帰るのかと思えば、ショッピングモール内にあったギャラリーを見学。
各地で感じますが、海外で日本よりアートは身近なものです。
彼らも、「これすげー」「何だこれは?」などと自分なりの感想を述べながら鑑賞していました。
愉快な3人組。怖いイメージは完全に無くなりました。
Cさんの謎の単独行動も含め、おしゃべりをしながらのんびりと帰ります。
やっと家についたと思ったのですが、
なんとこの3人が始めたことは・・・
ポップコーンづくり。
映画の前後で一生懸命食べるポップコーン。新しい食べ方で意外といいのかもしれません。
なぜ彼らがこの家に集まり、何を仕事に生活をしているのかよく分からず、いろんな友達や旅人が出入りするこの家。
謎の多いままでしたが、別れの時が近づきます。
海外ではお別れの際、意外とあっさりしていることが多いですが、この日は違いました。
旅立つと聞いて、率先して玄関の扉を開け、最後まで見送りしてくれたのはアニキでした。
最初の怖いイメージとは違い、寂しそうに「行かないでくれよ」と言うアニキの顔は忘れられません。
「私と彼らの物語」はこうして幕を閉じます。
コルドバの向こうは、不思議の街でした。
隆吾さん、笑いました~!アニキのキャラ、最高だね!あったかいね~。気をつけて、楽しい旅を続けてね。
観光名所、絶景もいいですが、こうした出会いが一番印象に残ります。