「ピラミッド」と言えば、小学生のころによくテレビ番組に出ていて、その度にこのおじさん(吉村作治)が出ていた印象があります。
(出典:www.dydo.co.jp/corporate/news/2014/141126.html)
そんなイメージ付きのピラミッド、本当に不思議な建造物で、一度は見てみたいとずっと思っていたのでこの旅をきっかけに行ってみることにしました。
エジプトはアフリカ大陸に属していますが、首都カイロはヨーロッパを思わせる建物が並び、また人々はアラブ系で毎日アザーンが街中鳴り響いており、興味深い地域です。
カイロ入りの翌日、ビラミッドへと向かいます。
ギザ駅からピラミッドへ向かうバスの中で、後ろの席に座っているおじいさんに話かけられました。
「どこから来たの?」
「日本です。」
「日本の首都は東京?」
「イエス。」
とよくある簡単な会話。エジプトの人はよく話をかけてきて「ウェルカム・エジプト!」と言ってくれます。
その後は、本当に興味を持ってくれ優しくしてくれる人と、商売の話をふっかけてくる人に別れます。
さて、このおじいさんはどっちだ?と様子を伺っていました。
やけに笑顔でいろんな事を聞いてくる。優しそうなおじいさんですが、今から行くピラミッドでは多くの客引きや騙す人がいると調べていた情報があったのでかなり警戒していました。
と、おじいさんが
「日本はすごいよね。エジプトも文明が発達したけど、今は良くないよ…」
ちなみに…、私がカイロに滞在した際、エジプトポンドの価値が半分以下に暴落している時でした。ピラミッドに行ったこの日には、「大規模なデモが起こる」との噂も出ていました(警察や機動隊が出動していましたが、特に大きなデモは見られませんでした)。
おじいさんの話しに興味を持ちつつ、警戒の気持ちも持ちつつバスに揺られていると、
「See you!」
と言って席を立つおじいさん。そのままバスを降りて行きました。
商売とは関係なく、本当に興味を持って話しかけてくれたんだと思うと、もう少し優しくしておけばよかった…と後悔。
その後しばらく、バスの窓から受ける冷たい風に吹かれながら、あのおじいさんが言った
「今は良くないよ・・・」
という言葉が頭を巡っています。
「文明ってなんだろう。良いものがあるのに何故衰退するのだろう…」
そんな疑問を抱きながら、バスはピラミッドの見えるところまでやってきました。
(こちらの写真はスフィンクス側入り口近くから夕刻の写真。実際はクフ王側入り口から昼に入りました。)
早速ラクダの客引きが声をかけてきます。
「入り口はこっちだよ!」
この手口はすでにチェック済みで、客引きの言う場所は入り口ではなく、通称「ラクダのたまり場」と呼ばれるところです。
客引きの話しは無視し、スタスタ入り口を目指します。
いざ入場すると、目の前には・・・
客引き。
「ハロー!チケットを見せなさい。」
こちらの手口もチェック済み。チケットを人質にラクダまで連れて行く客引きです。
無視していると、案の定「ラクダ乗る?」と日本語で話しかけてきました。
観光地で騙すのはたくさん経験してきました。彼らはピラミッドのことなんて何とも思ってないのでしょう。
むしろ、利用して観光客を騙す「モノ」としか捉えていないのでしょうか。
観光業を営む方々には、源となる歴史や文化、建物や遺産に敬意を払うべきだと感じます。
残念な気持ちを晴らしてくれたのは目の前に立ちはだかる巨大な建造物でした。
とにかくその大きさと、これを人間が作った、しかも紀元前2000年よりも前から作られていたという事実に言葉を失います。
正直、ピラミッドやエジプト文明について詳しくわからないままこの地へ来ました。
恥ずかしい話しですが、ピラミッドは3基ほどしかないと思っていました。
みなさん、エジプトに残るピラミッドって何基あるかご存知でしょうか?
なんと、残っているものだけでも118基あるそうです!!!
確かに、遠くに幾つものピラミッドが見えます。
様々な世界遺産(建造物)や作品等を見てきましたが、「残る」ということの価値の大きさは簡単に説明することは難しいです。
過去の人々が残したものを、何千年の時を越え、こうして現在でも私たちを過去と結びつけてくれています。
敷地内を歩いていると、掃除をしている方々がいました(写真は休憩中)。
こうして掃除を仕事としてする人がいる。ということは「ゴミがある」ということです。
このような遺跡の前に、砂漠の中に、一体どのようにしてゴミが溜まるのでしょうか。
観光客のために用意された馬やラクダの糞を片付けるのは百歩譲って理解できます。しかしながら、タバコの吸い殻やペットボトルのゴミがたくさん落ちているのはどうも納得いきません。
観光客も、目の前の遺産をただの「モノ」としか認識していない人も多くいます。(写真だけ撮ってすぐいなくなるといった光景はかなり多い・・・)
もちろん、見方や感じ方はそれぞれです。知識や理解なくとも、敬意を払うことはできるはずです。
「文明」とは何でしょうか。
現代は人間の歴史の中でも最も文明の発達している時代だと思います。
「文明の発達」って何でしょうか。
結局大切なのは「心」だと強く感じました。
この偉大な建造物に敬意があり、誇りの心があれば、騙して利益を得ようとする人はいないはず。ゴミをわざわざ残していかないはず。
現代の文明は発達しているのでしょうか。それとも衰退しているのでしょうか。
よくわからない感覚に陥りました。
翌日、考古学博物館へ行きました。
こちらは凄い展示品の数。じっくりみると1日かかってしまいそうなくらいです。
数ある展示物の一部です。この規模は本当に凄い!
しかし、この博物館でも考えられないことが起こっていました。
撮影禁止の特別室。そこにあるのはツタンカーメンの黄金の仮面です。
(出典:wikipedia)
そこには一人のスタッフが立っており、撮影禁止のマークに気づかない鑑賞者に声かけをしていました。
興味深い展示品に時間をかけて見ていると、なにやらモゾモゾしているスタッフが目に入りました。
よく見ると、左手に持っていたのは、
タバコ。
一瞬自分の目を疑いました。
でもしれは確かにタバコでした。
何を思ってなのか、スタッフはタバコの一本を手に持ちながら特別室に立っています。
まさかの事態は起こりませんでしたが、その後はそのタバコを堂々と箱にしまっているではありませんか・・・
恐ろしい光景はまだ続きました。
一通り博物館を見学した後、ミュージアムショップへと順路は続いていきます。
そこにいたのは野良猫。
全く活用されていない棚に、ただただ置かれたお土産品。
ある美術館の考え方では「理解と解説がない博物館はただの倉庫」という表現をしていましたが、そのような印象を受けてしまうミュージアムショップ。その前に、野良猫が入り込んでるって・・・(もはや倉庫のような扱いになっている展示スペース)
そして最大の衝撃は、レジにいるおじさんが、タバコを吸っていたことです。
ここは世界的にも貴重なものが残る博物館。まさかの事態になると取り返しがつきません。
思い切って聞いてみました・・・
「スモーキング OK?」
答えは・・・
「Yes」
言葉も出ませんでした。
これらの衝撃的な事実とは対照的に、こうした場面にも出会いました。
かつては黄金時代を築いたエジプト。
今に見る文明の衰退は「誇りの衰退」によるもの。
そしてそれは「教育・学び(適切な理解と心)」がポイントになってくると感じました。
光(心)の当て方によって、輝くものになるのか、影となってしまうのか違いがでてきます。
輝くものを共有・共感し合うことができれば、「残るもの」「継承していくこと」双方共に誇りが生まれ、本来あるべきの遺産となるのではないかと感じました。
「誇り」は、「教育・学び(※単に勉強という意味ではない)」という行為で培われ、それが「文明の発展」そのものではないかと考えます。
バスで出会ったおじさんの言葉が蘇ります。
「今は良くないよ・・・」
文明が発達している今日の世の中。大切なものを忘れてはいけません。
決して人ごとではない現代の現状。
「文明とは何か」
みなさんはどうお考えでしょうか。