チョルポン=アタという町から車で2〜3時間、カラコルという町へ移動します。
道中、このような光景がよく見られます。
キルギスの田舎はこのよに動物たちに出会うことがよくあります。うまく抜けれるまで、牛と一緒に並走。
カラコルはキルギスでも4番目に大きな都市で、標高1700mほどの高地にある自然豊かな場所です。
町の南には天山山脈が広がり、中国との国境沿いには7000m級の山もあるようです。(町の外れの道。奥には山脈が見えます。)
カラコルの素晴らしい自然が密かな人気をよんでおり、海外から1泊2日や3泊4日など、トレッキングに来ている人を見かけます。
私が行ったのは1泊2日、片道16キロのコースです。町から車で30分ほどのところに、登山道の入り口があります。
(観光客が増えたので、間違わないよう看板が建てられています)
トレッキングコースは主に川沿いを歩きます。川沿いと言っても標高1800m近くあるので、ちょっとした坂でも息が切れてしまします。
ベストシーズンより少し遅かったため、登山客もさほど多くなく、擦れ違ったのは10人弱。
日本でもそうですが、擦れ違う際には「挨拶」を行います。
「ハ〜イ!」
笑顔を見せてくれる人もいれば、疲れてしまっていますが一瞬ニコッとしてくれる人など様々。
でも、その「挨拶」の中には、「お疲れ様!」「Good Luck!」といった意味が込められていることが伝わってきます。
当たり前の話ですが、「挨拶って意味があるんだな〜」なんてことを改めて感じるきっかけとなりました。
挨拶って気持ちいいですね。
途中何度か車と擦れ違うこともありました。
みんな本当に優しくて、
「乗ってくかい?」
と気遣ってくれます。
長い道のり。乗って行ったら楽だなとは思いますが、そこは頑張っていこうと決意していたので断ることに。
彼らは、もはや道ではない岩場も通ります。
登山客でかでなく、地元の人もたまに見かけます。林業を営んでいる人もいました。
歩いていると様々なものに出会います。
見た事もないクモや道案内してくれるチョウ、癒してくれるリス。
命あるもの全てが美しく感じます。
その中でも特に感動したのは「樹液」との出会い。
触った感覚は、固まりかけの「のり」といった感じ。
匂いは強烈ないい匂い。
そしてそれが「透明」ということに感動を覚えます。
山道では、どこからともなく集まってきた水たちが、川に向かって歩調を会わせます。
(山道を横切ることも)
(水は冷たく、足を5秒つけただけで痛くなるほど)
3時間ほど歩いたので、昼食がてら休憩することに。
川に向かって集まってくる水たちの通るところに、休憩できる場所がありました。
足を止めると、意識は耳に集まります。
同じではないものの、一定のリズムを刻む「水の流れる音」。
聞いているうちに、ある作曲家の曲が頭の中で流れてきました。
「久石譲」
ミニマル・ミュージック(動きを最小限に抑え、パターン化された音型を反復させる音楽)で日本を代表する作曲家の一人です。
音楽が得意ではない私ですが、中学の時に久石譲の「summer」に惚れました。
何度も何度も聞いた彼の曲がここで出てきたのは自然なことなのかもしれません。
音楽と川の音がフィットし、心地よい空間に包まれた感覚を覚えました。
「自然との共存」をテーマにした映画『もののけ姫』。その映画のテーマ曲「アシタカ聶記」「アシタカとサン」も久石譲の曲です。
自然との共存を「音楽」によって見事に表現されたのだと、強く感じた瞬間でした。
※映像は「summer(映画バージョン)」。風の音が入り、聞きにくくなっていますが、ご了承ください。
そしてこの流れる水もまた、透明なのです。
長い道のりを歩くことで疲れることは覚悟していましたが、むしろ「自然」の力で気持ちよく過ごすことができたような気がします。
この日のトレッキング終盤、急な坂道を越えていくと…
遠くにうっすらと見えてきました。
雪の残った山です。
元気付けられたところで、もう一踏ん張り!!!と思っていると視界が広がり、そこには滞在する山小屋が見えてきました。
世界各国からの登山客がいるようで、それぞれの国の言葉で案内が書かれています。日本人が知らない場所で海外のが知る素敵な場所は、まだまだありそうですね。
山小屋の予約はしていないので、3カ所(時期によって異なります)の中から金額や条件を聞き、部屋を見せてもらって判断します。
(川を越えたところにもあるので聞きにいきます。ここは遊牧民伝統の「ユルタ」に泊まることもできます)
値段はそこまで変わらないので「オーナーの優しさ」「朝食付き」が決め手となり、最初に訪ねた宿に決定!(ユルタは前日にカラコルで泊まったので、それでいいことに…)
山の奥。ご飯は高くつくので朝食つきはありがたいものです。
ちなみに…
夕飯もお金をかけたくなかったので(あまりたいした事ない金額ですが、長旅では考える必要があります)、持参したインスタントラーメン!
キルギスでは定番のラーメンらしく、また夕飯は宿にお願いするのが普通らしく、キッチンにいたおばちゃんたちが「自分で作るの?そしてそれ?」と笑って見ていました(キルギス語なのでわかりませんが)。
リビングのようなところでは、本日の登山客で賑わっていました。
早速登山客にも「お前はインスタントラーメンか!笑」と言われました。
この日が誕生日の方もいたようで、みんなでお祝いです!また、車で擦れ違った方々もおり、みんなの笑顔で包まれた空間でした。
みんな国籍は違えど、進む方向が一緒なら(共感があれば)一つになれます。
こちらは天然温泉。この建物では3つの部屋に別れており、他の人を気にせず温泉に入ることができます。
(脱衣所)
ちょっと硫黄の匂いが強いかな?と感じましたが、そんなのはお構いなし!16km歩いて、陽が沈み暗くなった空間では、暖かさと疲れを取ってくれる温泉は、最高としか言いようがありあません。
温泉に入った後は…
疲れももちろんありますが、いつの間にか「幸せいっぱい」でスヤスヤと寝ていました。
翌朝。
明け方の雨もすっかり晴れ、ひんやりとした気もちいい空気で目を覚まします。
ちょっと周辺を散歩。
(左下の三角屋根はトイレ。もちろん「土に埋める式」です。)
(部屋に戻り、寝転がりながら望む川)
そして楽しみにしていた朝食(パンもあります)。
出来立てで、温かいものは幸せを感じます。
早々に宿を出て行く登山客。私はちょっとのんびりお茶を飲んでいました。
すると、昨日車で擦れ違った親子の男の子がメモ帳を持って私に話しかけてきました。出会った人のサインを集めているようです。(その男の子。左手にはサイン帳。)
スペイン人にしては珍しく(?)照れ屋で恥ずかしがりやな彼。
そんな性格ですが、世界の旅人に興味を示しており、各国の言葉を少しずつ覚えているようでした。日本にも言ったことがあるようで、単語ではありますが少し話してくれました。
今の発展した都市ではある程度人と接しなくても自分で生きて行くことが可能です。ブータンを訪れた際にも感じましたが、人々と「共有」「共感」しながら生きていくことが「幸せ」への近道なのではないかと思います(ブータンでは一人暮らし用の建物はなく、家族や親戚、近所の人々過ごす時間がとても長いです)。
彼の「(恥ずかしがりながら勇気を持って)自ら動き、人との出会いを大切にする気持ち」に感銘を受けました。
私も出発の時間です。
また16kmの道のりを歩きます。
今回のトレッキングもいろんなことを考えさせてくれた時間となりました。
自分で決めた道を一歩一歩行き(生き)、判断したからこその経験。
「楽」をする選択肢もありましたが、それでは出会いなかった人や経験ばかりでした。
カラコルの町にもどると、そこにあるのは日常の風景。
ふと、この1日で起こったことが頭を巡り、目の前の日常とのギャップに、神隠しにあったかのような感覚になりました。
そして後ろを振返り、山を見上げるのでした。