民族スポーツに特化した国際スポーツ競技、その名も「ワールドノマドゲーム」。
遊牧民のオリンピクと言われるこの大会は2年に1度開催され、2回目の今回はキルギスのチョルポン=アタで行われました。(公式ホームページより)
(キルギス伝統の帽子「カルパック」に大会ロゴの入ったグッズ)
開催地のチョルポン=アタは、観光客が多いわけでではなく、地元民の生活を垣間見る事ができる、ほのぼのとした空気の漂う町です。
(キルギス伝統の帽子「カルパック」。ヒツジの毛を凝縮して固めた生地でつくっているため、熱を通さず、夏は涼しく冬は暖かいとか。この技術をスウェーデンの人も活用したという話もあるようです。)
こんなレトロな車がたくさん走っています。
中央アジアのスイスと言われるほど自然の豊かなキルギス。町の南にはイシク・クル湖がり、絶景が広がっています。
イシク・クル湖は琵琶湖の9倍の大きさがあり、透明度の高さでも知られている湖だそうです。
そんな湖はみんなの憩いの場です。
さて「ワールドノマドゲーム」ですが、主な出場国は、カザフスタンやキルギスなどの中央アジアとロシアで、競技によっては中国や日本、韓国などの東アジアだけでなく、世界中から参加しているようです(下写真は会場前に並ぶ参加国国旗。これで半分。日本の国旗も見えますね!)。
遊牧民の民族スポーツは日本ではあまり馴染みがないので、どんな競技が行われるのか楽しみです。
この写真を見て、どのような競技か想像できますか?
(公式ホームページより)
実際に会場に行ってみましょう。
大会期間中、チョルポン=アタ中心部から各会場へは無料シャトルバスが運行しています。
ガタガタ道を1時間半ほどかけて山奥へ向かいます(後ろの扉開いてるけど大丈夫?)
視界が開けた!と思ったら見えてきました。美しい山間の中に白い小さなものが見えます。これは「ユルタ」と言って、遊牧民が使用する移動式のテントです。モンゴルのゲルと同じようなものです。
(ユルタの解体作業中)
今回は見ることができませんでしたが、ユルタの速組み競争もあるようです。優勝クループはなんと10分!!!
ちなみに…、キルギス滞在中、実際にユルタに泊まってみました。
ユルトの天窓は、3本線2組の構造で建てられています。これは「テュンデュック」と呼ばれ、「祖国」と「宇宙」を表しており、代々受け継がれていくものなのだそうです。
- そしてテュンデュックはキルギスの国旗のデザインにもなっています。
会場に戻しましょう。
バスを降りると会場まで少し歩きます。おばちゃん、かっこいい。
川に臨時コンテナ橋!入り口には軍人さんがおり、簡単な荷物チェックがあります。
バスストップから向こう側の会場まで馬に乗っていくこともできます(有料)。
会場が見えてきました。盛り上がっています。
(関連グッズも販売しています)
こちらは自由に参加できるゲーム。馬に乗っていことを想定して丸太に乗り、道具を使って相手を落とした方の勝ちというゲームです。
メインの会場でやっていたのは「のど自慢大会」のようなもの。
個人で登場する人もいますが、写真のように衣装を着て団体で登場する方々もいました。
・・・あれ?
祭りの雰囲気は感じまsう、遊牧民スポーツの感じが全くしないことに気がつきます。
何の種目か分かりませんが、次のプログラムまでちょっと時間があったので昼食。
仮設レストランでキルギス文字が全く読めず困っていると、とある女性が英語で話しかけて通訳をしてくれました。カードを下げており、スタッフのようです(後に他のスタッフにも助けてもらいますが、スタッフとして活躍する若者たちは皆流暢な英語を話します)。本当に親切な方でした。
そしていただいたのは、伝統料理の、ヒツジ肉と玉ねぎのシンプルな麺。180ソム(ちょっと高め)。
昼食を終え再びメイン会場に向かいましたが、競技は行われていません。
スタッフに聞くと、
なんと・・・この会場で馬に乗った競技は昨日までとのこと…(この日は大会6日間中の5日目)。
この雰囲気と景色は最高でしたがショックでした…。
しかし!もらったパンフレットでプログラムを確認すると、別の会場で馬に乗った競技(この時点では、まだどんな競技が定かではありません)を行うようです!
急いでシャトルバスに乗り込み、別会場へ向かいます。
再びガタガタ道でおしりを痛めながら進み・・・
到着すると立派な会場!!!(行きは居眠りをしていて気づきませんでした)
荷物検査を終え、足場やに会場に入ります。
中は競馬場のような会場で、本格的な機材にビックリ!
(奥には湖。雰囲気は最高です!)
この日行われていたのは、乗馬したまま行う、相撲のような競技のファイナル。
観戦スタンドから距離がありながら感じる、振動と力。興奮して目が離せません。
シンプルに見えますが、自分と馬を興奮させ、馬を操りながら力とタイミングの技を競う姿に奥深さを感じます。
決勝戦はキルギスVSカザフスタン。
地元の大歓声も虚しく、隣国のカザフスタンが金メダルを獲得しました。
翌日、
大会最終日に行われる遊牧民スポーツ最大の競技、「コクボル」を観戦します。
事前学習によると、どいうやら「羊」を持って、ゴールに投げる!というもの。映像でも確認しましたがよくわかりません。
羊は人形と思っていましたが、どうやら本物の羊のようです…。よくわからないまま当日。
会場入りすると、昨日とは違って立ち見が出るほど超満員!
さすが遊牧民最大のスポーツ。響く歓声と指笛!大熱狂の会場です。
よく見てみると、その時行われていたのは、馬の持久走(22km)。
時間をおして行われていたこの競技は、ジョッキー2人(12歳以上)とコーチ1人の3人で構成するチームで、速さを競うものでした。
30分も乗りっぱなし!!!
優勝した子どもの親は大喜び!
それもそのはず、優勝賞金は約200万円!!!(2010年のデータ(wikipedia)では、キルギスの平均月収が2万円弱)
そしてUPの映像を見ると、鞍(騎乗の際に使用する馬具)を付けていません!この状態で30分!巧ましすぎます。
そしていよいよです!
謎の競技「コクボル」の決勝戦。キルギスVSカザフスタン。ちなみに3位決定戦は中国VSロシア。18-2で中国が3位に輝いています。
気づけば先ほどより超満員!選手入場の際は大歓声です!!!
選手はポジションごとに紹介。
10番の時は大歓声!サッカーのような意味もあるのでしょうか。
盛り上がりがピークに達し、競技開始です!
まずは転がっている羊をめがけて数頭の馬が一気に襲いかかります。
ん???
よく見ると、ヒツジの頭部はありません!!!
元々は勝利したチームがその羊を獲得できるというスポーツで、今では羊の代わりに砂の入った袋やボールで行うこともあるようですが、この決勝戦では本来のスタイルで本物の羊を使用していました。
まずそのスタイルに衝撃を受けます。そしてその転がっているヒツジを馬に乗りながらキャッチするという技術にも衝撃を受けます。
見ている側の衝撃もすごいですが、選手たちを襲う衝撃もすごいようで・・・
衝突する馬と馬の間に挟まれると怪我に繋がります。
開始早々倒れ込む選手。意識はあり歩いていましたが、救急車で運ばれる事態に。
スポーツには事故や怪我はつきものです。選手が運ばれたことは不運ではありましたが、その勇気ある勝負心、そして激しい接触の中でルールに法り、互いを尊重する両チームの選手の姿に、スポーツマンシップを垣間見る事ができました。
開始早々白熱した試合はホームのキルギスが先制します。
会場は大盛り上がり!場内にキルギスタンコール!負けじとカザフスタン側もカザフスタンコール!互いに言い合うのですが、両国とも、国名の語尾が「スタン」なのでそこはきれいに聞こえるというおもしろい現象に。
その後も試合は終止キルギスが優勢。
カザフスタンも後を追いますが、馬の質が違いました。馬の速さは試合を左右します。最初に羊を奪うことが圧倒的に有利です。その最初の奪い合いをほぼキルギスタンが取っていました。
また、オフェンス有利のスポーツですが、ここでも馬の足の速さが際立ってます。キルギスの馬の速さはカザフスタンを圧倒し、早く回り込むことができるのでなかなか得点に繋げることができません。
最後まで優勢に試合を進めた開催国キルギスが15-3で見事優勝。
大会を通しても、金メダルの数が圧倒的に多いキルギス。
今回が2回目の「ワールドノマドゲーム」。
会場は立派ですが、運営面ではまだまだ改善の余地がありそうです。しかし、海外のメディアが来ていたことや若い人が英語を話せるということなど、今後スポーツとしても、ビジネスとしても大きく伸びていくのではないかと感じました。
また親日であるキルギスは、日本人はビザなしで入国できます(60日)。日本語を勉強している人や、実際に日本語を使って話しかけてくれてた方もいるほどなので、「直行便」さえ通れば、今後日本からの観光客も期待できそうです。
羊を投げる行為は衝撃的でしたが、目の前で繰り広げられている競技は「文化」「環境」が深く結びついており、スポーツの起源と美しさを感じます。
日本からはちょっと行きにくい中央アジアですが、この大会は「スポーツとは何か」を感じることのできる、現代に残る来ず少ない大会なのではないでしょうか。
次回開催は2018年。 計画はお早めに!