北アイルランド「差別の中に生きる子どもたち」と、ロンドン「多様性の未来」・・・


北アイルランドはUK(グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国)に含まれる地域です。

 

歴史を遡ると、アイルランド島はブリテン島(イギリス)の支配下にありました。

その後アイルランドは独立へと動きます。しかし、北部アイルランドはイギリスからの移民が多かったため、イギリスの一部として残る方向へと動きます。

 

そこで起こったのが北アイルランド問題です。

もともとアイルランド島にはカトリックが多かったのですが、イギリス側から非カトリック(プロテスタントやアイルランド正教会)の宗教が入ってきました。

北部に残る非カトリックの人と、元々いたカトリックの人の割合に大きな差はありませんが、北アイルランドはプロテスタント国家として歩んでいきます。

 

そして、カトリックの人々に対しての差別が問題となり断続的にテロが起こるようになりました。

 

現在はテロが起こるようなことはありませんが、未だに残る差別の壁が目に見えてあるのです。

 

 

北アイルランドの中心都市、ベルファストへ到着した時の印象は、街はきれいで落ち着いた雰囲気。こんなところに住めたらいいな…なんてことも考えるほどでした。img_9259

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しかし今も残る「壁」があると聞き、実際に見に行くと、全く違う印象にただただ驚きました。

 

 

 

 

そこにあったのは高い鉄格子や壁。 そして異様な空気。

 

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人が殆ど歩いていないところが不気味さを強調させます。

 

 

ここはカトリック派の人々が生活する地域。

周囲には20kmにもおよぶと言われる「壁」が残っています。

 

所々にはゲートも…。

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今でも夜間は封鎖されるのだとか。

 

 

人を寄せ付けぬ空気はこんな所にも出ています。

「NOT WELCOME IN THIS AREA」の文字。

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このエリアには、壁に壁画が描かれており、ちょっとした観光名所となっています。平和を訴えるものから、各思想の思いが表現されているものまで。

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      IMG_9494 (中央やや左、焼かれた跡が残っています。)IMG_9495  

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観光客は地元のタクシー(観光名所を回ってくれるサービスがある)やツアーでこの地を訪れます。歩いて来る人は少なく、たまに見かける旅人からは緊張感が伝わってきます。

 

 

 

「あなたの信仰している宗教は何ですか?」と聞かれ、多くの日本人は困ってしまいます。

そんな日本人から見たら、宗教が原因で差別があるなんて考えられないことでしょう。

 

 

 

しかし、ここで非常に悲しい現実に突きつけられました。

 

 

 

 

 

歩いていると、擦れ違った子どもたち(おそらく小学生)に罵声を浴びせられたのです。

 

英語でも、アイルランド語でもないような感じの言葉だったので意味はわかりませんが、いきなり表情を歪ませ、唾が飛んでくる勢いで顔を近づけてきました。img_9491(罵声を浴びせられた現場)

 

実は、この場所へ来る前の日にも、子どもたちに罵声を浴びせられました。その時は何のことかよく分からず、手を出してくる勢いだったので、ただの柄の悪いやつらだと思っていました。

 

 

しかし、こうして2日連続でただただ擦れ違っただけの子どもたちに、罵声を浴びせられる体験は今までにないことでした(明らかに悪意がこもって…)。

 

あくまで私の憶測ですが、彼らはカトリックの子たちで、日頃から感じる差別にストレスを溜めているのでしょう。そしてよそ者(歴史的に見ればプロテスタント)として見られたのかもしれません。

 

 

 

それにしても、しばらくショックというか悲しみというか・・・

モヤモヤとした気持ちが無くなりませんでした。

 

 

見知らぬ人に罵声を浴びせる人(しかも小学生)は尋常じゃないほどメンタル的に追い込まれているのではないでしょうか。

 

 

この地ではどのような教育が行われているのか…。

どのような大人たちがいるのか…。

 

 

 

 

 

歴史的に残る問題は、しっかりと見つめていかなければ、次世代の子どもたちにツケが回ってしまいます。

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ユニオニスト(イギリスの一部として残る派)とナショナリスト(アイルランドと統合する派)は宗教との関わりが大きいですが、現在では無宗教も増えているため、単に宗教だけの問題ではなく、複雑に絡み合う問題となっているようです。

img_9287(お土産屋さんに「一応」置いてあるユニオンジャック)

 

 

そんな中で、今年5月に行われたロンドン市長選挙で勝利したのは、イスラム教徒のカーン氏でした。f91132a2(出典:societas.blog.jp)

 

イスラム国によるテロがヨーロッパで多発している中、初のイスラム教徒の市長が誕生するというのは印象が良くないと思われ、意外なことでした(※※※「イスラム国=イスラム教」ではないので、くれぐれもお間違えのないように!!!)。

 

なぜカーン氏が他の候補者から勝ったのか。

 

 

それは、ロンドン市民が選んだ「多様性」でした。

 

 

ロンドン全体の人口に対し、イギリス国籍で白人の割合は半数を下回ると言われており、多国籍・移民の文化が生み出した「平和への願い」なのです。

 

 

国家や都市として有益を考えることは避けられないことだとは思いますが、「差別化」で有益になるのではなく、「共有」「共感」によって有益になる考え方で、ロンドンのように本来の平和を生み出していくべきではないかと考えます。

 

 

市民が動かした「差別なき世界への第一歩」。

 

 

北アイルランドの子どもたちにとっても、良い未来を提供できるよういち早く「ベルファストの壁」が無くなることを願っています。

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