アルフォンス・ミュシャ(ムハ)
アール・ヌーヴォーを代表するデザイナー。
「見たことある!」という方も多いのではないでしょうか。
そんミュシャの作品の中でも、魅力的なシリーズ「スラブ叙事詩」。
6m×8mもの作品20点からなる超大作です。
この作品は、チェコ国民が祖国の歴史と向き合えるように描かれたものです。スメタナの「わが祖国」など、音楽や文学で祖国を表現した作品はいくつかあるようですが、この作品には「絵画による視覚的な作品が最も効果的である」というミュシャの想いが込められています。
「叙事詩」とは、神話や英雄、歴史として語り伝える価値のある出来事の物語として、語り伝えられるものです。
チェコは、歴史的にも周辺国による支配や様々な環境の変化がありました。そんな中で生まれた思想や社会の仕組みは、現在の世の中の基となっているものがあります。
例えば、9番目の作品に出てくるヤン・フスの思想は、民主主義や国際連合などのもととなるものでした。
また16番のコメンスキーは、「知識をすべての人が共有するために」と考え、現在では当たり前の学校の仕組みを考え、彼の考えはユネスコの思想にもなっています。
1.現故郷のスラブ民族
独立と平和を象徴する作品。個人的に一番長く見惚れていました。
写真では伝わりませんが、夜空の美しさに言葉をなくします。(青はスラブの原点を象徴する色だそうです)
2.ルヤナ島のスヴァントヴィト祭
3.大モラヴィア国のスラブ語礼拝式導入
4.ブルガリアのシメオン皇帝
5.プジェミスル朝のオタカル2世
6.セルビア皇帝ステファンドゥシャンの戴冠式
7.クロムニュジージュのヤン ミリチ
8.グルンヴァルトの戦いが終わって
9.プラハ・ベツレヘム礼拝堂のヤン フスの説教
チェコで今も大切にされているフスの言葉「真実は勝つ」
フスは当時には合わない思想だったため処刑されまいたが、
10.クジージュキの集会
枯れ木と白旗は戦争と避けられない死を意味し、葉のついた木と赤旗はチェコの命と希望を意味しています。
11.ヴィトコフの戦いの後
12.ベルト ヘルチツキー
ヘルチツキーの思想「悪をもって悪に報いるべきではない」
13.国際平和機構
14.ズリンスキー総督によるトルコに対するシゲット防衛
15.イヴァンチッツェのモラヴィア兄弟団学校
16.民族教の師 ヤン アーモス コメンスキー
17.聖アトス山
この作品は日本にも一度来ているそうです。
18.スラブ菩提樹の下で宣誓する青年たち
19.ロシアの農奴制廃止
20.スラブ讃歌
作品の大きさにも圧倒されますが、人々の表情や動きの描写に感銘を受けます。
13.国際平和機構の作品右下、「ROMA」と書かれた本を閉じている少女。その手からは力強く閉じた印象を受けます。これは、ローマとの関係を切ったことを表しています。
また作品からは、ミュシャの制作軌跡を感じることもできます。
人物を特定させないため、あえて顔を描かなかったものもあるそうです。
未完成な左手。作品は生涯描き加えていたと言われています。
ミュシャの意図した通り視覚的な作品からは、観覧者の心に訴えてくるものを感じます。
この「スラブ叙事詩」20点が、2017年4月に東京にくるようなので、チェコの歴史と向き合うと共に、この大作を感じることができます!
おそらく大混雑が予想されるので、可能であれば、今年中にチェコに来ることがより良いかと思います。
「向き合う」
「制作すること」「表現すること」の意味を、改めて考えさせられた作品との出会いでした。
国立美術館 ヴェレトゥルジュニー宮殿